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ご臨終!突然「遺族」になったら 冠婚葬祭事典⑯

冠婚葬祭事典⑯葬祭準備編

目次 Contents

危篤を告げられたら

危篤を告げられたら会わせたい人に連絡を

病人が危篤状態にあることを医師から告げられたら、知らせるべき人に至急連絡を。一般的に、家族や二親等までの近親者、親しい友人や知人など、本人が会いたがっていると思われる人に知らせます。ただし、遠方で疎遠な親せきにまで知らせる必要はありません。
また、知らせる相手が療養中や妊娠中の場合は、連絡しないほうがよいこともあります。
キリスト教信者の場合は、神父や牧師に連絡し、来てもらいます。

危篤を伝えるときは速やかに用件を述べる

連絡方法は電話が一般的です。緊急時なので、目上の方に電話をかけても失礼にはなりません。早朝や深夜のときは、初めにひと言「早朝に(深夜に)失礼いたします」と断り、速やかに用件を述べます。あらかじめ要点をメモしておくと、伝えもれがありません。
●だれが危篤なのか
●どこにいるのか(病院名など)
●容体はどうなのか
●いつごろまでに来てほしいのか
●連絡先
などが、最低限に必要な内容です。
相手が不在の場合には、家族に伝言を残す、留守番電話に伝言を残す、ファクシミリを利用する、Eメールを送っておく、電報を利用するなどの手段があります。

危篤の連絡は一刻を争うので、電話を使うのがもっとも確実。不在のときは伝言を託して伝えてもらいます。

メモ 本人が遺言状の作成を希望したとき

危篤である本人が、遺言を残したいと希望するのであれば、口述による遺言書の作成を行います。その場合は、公証人と遺産相続とは無関係のふたり
以上の承認と、立会人全員の署名捺印が必要です。また、口述の遺言書は、作成した日から20日以内に家庭裁判所の検認を受けないと、無効になってし
まうので注意しましょう。


死亡を知らせる範囲

二親等までの連絡が一般的

死亡が確認されたら、すぐに駆けつけてほしい人に電話で連絡をします。親せきには、一般的に二親等くらいまで連絡をします。遠方の親せきには、準備のつごうからも、できるだけ早く伝えるほうがよいでしょう。
また、親しい友人や知人にも知らせます。知らせる相手が多い場合には、おもだった人に知らせ、その人だちから手分けして伝えてもらうとよいでしょう。その際は、たいせつな人に連絡もれのないように、だれに連絡してもらったか、把握しておきます。
仕事関係の人などには、通夜や葬儀の日程が決まってから連絡します。出席してもらえるかについては、聞かなくてもかまいません。あいさつ抜きで、死亡したことと、通夜や葬儀の日程を知らせます。

[危篤、死亡を知らせる範囲]

危篤や死亡の連絡は、一般的にはこのように二親等までを目安に連絡をします。親せきではなくても、親しかった人には連絡するとよいでしょう。

メモ 生前に相談してもよい

家族が危篤になったり死亡したときにはだれに知らせたいかを、生前のうちに確認しておくと、いざというときあわてません。縁起が悪いとは考えず
に、元気なうちから家族で話し合い、連絡先を把握しておくとよいでしょう。
遠方の人には早めにようすを知らせるなどの配慮もできます。


親せきや親しい人に死亡の連絡をする

親しい人以外は日程が決まってから連絡する

親族や親しい友人、知人などへの死亡の連絡は速やかに行います。会社関係者やお付き合いの薄い人には、葬儀、告別式などの日程が決まってからでかまいません。
連絡は電話で行います。この場合、相手目上の方であっても、失礼にはなりません。
電話をするときは、危篤の連絡と同様、あらかじめ用件をまとめてからかけます。そして、急に電話をする非礼をわびた後、すぐに死亡を知らせます。

[電話で連絡するときのことば]

突然のお電話で申しございません。私、○○の娘の幸子と申しますが、本日○時に父が亡くなりました。通夜を○日○時に、告別式を○日○時に○○で行いますので、とり急ぎお知らせいたします。

葬儀までに時間があるときは、まず、死亡通知状を出し、その後で葬儀日程を伝えます。

[死亡通知状の例]

メモ 死亡広告を出す場合

故人が要職にあったり、知名度の高い人なら、新聞の「死亡記事」や「死亡広告」を利用すると広範囲に知らせることができます。死亡記事は無料で
すが、死亡広告は有料になります。広告を出したい場合は、広告代理店か葬儀社を通して申し込みます。死亡広告は、葬儀の前々日の朝刊までに出すのが一般的です。料金は広告の大きさや新聞によっても異なります。



死亡後の法的手続き

医師に死亡診断書を書いてもらう

人が死亡した場合、死後7日以内に死亡届を役所に提出することが法的に義務づけられています。死亡届の右半分は死亡診断書(死体検案書)になっていて、医師が記入します。
死亡届を提出しないと死体火葬許可証や埋葬許可証をもらえないので、死亡当日か翌日に提出しましょう。役所で24時間受け付けています。葬儀社が役所への提出を代行してくれることもあります。

死体火葬許可証と埋葬許可証をもらう

死体火葬許可証と埋葬許可証は、死体を火葬することと、遺骨を埋葬することを認めてもらう書類です。
死亡届を市町村役場に提出する際に、死体火葬許可証交付申請書を提出すると、死体火葬肝可証が交付されます。
死体火葬許可証は、火葬当日に火葬場に提出する必要があります。この許可証がないと、遺体を火葬することができません。
火葬が終わると、死体火葬許可証に火葬証明印が押されて返ってきます。これが埋葬許可証になり、遺骨を納骨するときに必要となります。埋葬許可証は、5年間は保管しておく義務があり、再発行はできません。
いずれも葬儀の進行に必須の書類なので、家族が確実に届け出をするようにします。

臨終後、病院から遺体を引き取るときは、医師に死亡診断書を書いてもらいましょう。

メモ 死亡後の手続きの流れ

病院・医師が発行

監察医・警察医が発行

役所

火葬場


死亡届の書きかた

必要事項を記入し、署名押印が必要
死亡届は、右半分か医師が記入する死亡診断書に、左半分が遺族が書き込む欄になっています。届出人は、氏名や死亡した日時などの必要事項を書き込み、署名押印をします。
死亡診断書は、診断治療にあたっていた医師か、死亡を確認した医師が発行します。必要事項を記入し、署名押印をしてもらったものでなければ認められません。

[死亡届と死亡診断書]

①死亡届の右側は、医師が記入します。通常は死亡診断書として医師が、突然死や事故、事件の場合は死体検案書として監察医または警察医が発行します。
②死亡届の左側は、手続対象者(故人の親族など)が記入します。役所への届け出は葬儀社に代行してもらえますが、届出人の印鑑が必要です。

メモ 死産だったとき

妊娠満12週以降の死児の出産を死産といいます。死産の場合、死亡届ではなく、死産届を役所に提出する必要があります。
医師または助産師に死産証明書を書いてもらい、死産後7日以内に役場に死産届を提出します。人工妊娠中絶の場合も妊娠満12週以降なら同様です。

メモ 出産直後の死亡手続き

出産直後に赤ちゃんが死亡した場合は、医師に死亡診断書を作成してもらい、出生届と死亡届を提出します。


病院で死亡したとき

霊安室に安置されその後は自宅に運ぶ

病院で亡くなった場合は、病室で遺体の清拭や着がえを行い、その後、霊安室に安置されます。病院の場合、たいていは死因がはっきりしているので、すぐに医師が死亡診断書を書いてくれるでしょう。
病院での手続きと並行して、葬儀を依頼する葬儀社が決まっていれば、遺族はすぐに遺体を自宅に搬送する手配をします。また、車などで遺体を搬送するときには、必ず医師に書いてもらった死亡診断書を携帯します。

死亡場所によって必要な書類が異なる

死亡の状況によって、手続きに必要な書類が異なります。状況に応じて対処しましょう。

遺体を搬送するときは、寝台車を利用します。自宅の車で運ぶ場合は、必ず死亡診断書を携帯します。

[死亡状況別の必要な書類一覧]

死亡状況 必要な書類 提出場所
国内で死亡 近くの病院、自宅、遠方で死亡 死亡届、死亡診断書(死体検案書)、死体火葬許可証交付申請書(引きかえに死体火葬許可証を受け取る) 死亡場所、死亡した本人の本籍地、届出人の居住地の市区町村役場
死産 死産届/死産証明書
海外で死亡(国により多少異なります) 現地火葬 死亡証明書、パスポート、死体火葬許可証交付申請書(引きかえに死体火葬許可証を受け取る) 現地の役場、現地の日本領事館
遺体搬送 死亡証明書(現地に住所登録がある場合) 現地の役場
死亡証明書(現地のもの)、遺体防腐証明書、パスポート 現地の日本領事館
死亡証明書(現地のものと翻訳したもの)、梱包証明書、遺体防腐証明書、パスポート 航空会社
航空貨物引換証書 日本の葬儀社

病院以外で死亡したとき

自宅や事故死の死亡はすぐに医師か警察を呼ぶ

自宅で療養中に死亡した場合、医師が立ち会っていれば、すぐに死亡診断書を書いてもらえますが、医師がいない場合は、速やかにかかりつけの医師を呼ぶ必要があります。医師が来るまでは、遺体を動かしたり、触れたりしてはいけません。
かかりっけの医師が不在で、自宅で突然死した場合などは、警察に連絡します。死因がわからないときは検視が行われ、結果によっては行政解剖や司法解剖が必要になることもあります。
死亡の原因が、事故や自殺、犯罪の疑いのある場合にも、警察に連絡をします。このときは、監察医または警察医により検案が行われ、検案後に死体検案書が交付されます。それまでは遺体に触れてはいけません。

遠方で死亡したら遺体搬送を依頼

国内の遠方で死亡したときは、遺体搬送は現地の葬儀社に依頼します。現地で火葬をする場合は、死亡場所地の市区町村役場に死亡届を提出し、現地の葬儀社に依頼します。
海外で死亡した場合は、現地で遺体防腐処置(エンバーミング)を施したうえで、遺体搬送することが多いようです。火葬やエンバーミングを認めない国もあるので、日本領事館で確認しましょう。

現地で火葬した場合は、帰国後に本葬を行います。

メモ 感染症で亡くなったとき

感染症で死亡した場合は、遺体の移動が禁止されているので、自宅に連れ帰ることはできません。そのため、病院の霊安室で通夜と葬儀を簡単に行い、
病院から火葬場に直接運びます。自宅にもち帰ることができるのは火葬後となり、それから、あらためで葬儀を行います。

メモ 海外死亡の場合のパスポート特例措置

海外で死亡した人の遺族にパスポートがなかった場合、特例措置を利用すれば数時間で発行してもらうことができます。


献体と臓器提供

故人が献体を希望していたら

医学研究のために遺体を大学などに提供することを、献体といいます。故人が献体を希望していた場合は、その旨を医師に知らせ、死亡確認後に登録先に連絡をします。葬儀は通常通り行い、出棺後に登録先に搬送します。
遺体が火葬されて、自宅に戻ってくるまで長くて3年ほどかかります。

故人が臓器提供を希望していたら

臓器提供とは、病気の人に必要な臓器を提供することをいいます。希望していた場合には、担当の医師に伝えます。また、故人が角膜提供のアイバンクや腎臓提供の腎バンクに登録していたら、死後直ちに登録先に連絡すれば、臓器提供が可能になります。インターネットでも登録可能です。

[臓器提供意思表示カード]

臓器提供についての自分の希望を示しておくカードです。希望するときにはもちろん、提供したくないという意思も尊重されます。臓器を提供する場合には家族の承諾が必要なので、家族や医師にその旨を伝えておくことも忘れずに。
[表側]

郵便局や市区町村の役所、保健所、警察署、コンビニなどに置いてあります。

[裏側]

自分の意思に合う番号ひとつだけに○を、提供したくない臓器に×をつけます。本人の署名と署名年月日を自筆で書き、可能なら家族の確認の署名も。

臓器提供についての最新情報は、(社)日本臓器移植ネットワークのホームページをご覧ください。

メモ 献体登録に必要なもの

献体登録時には、本人の意思だけでなく、肉親の同意が必要です。同居別居を問わず、配偶煮親、子、兄弟姉妹など、肉親全員の同意の印が必要になります。詳しい内容は、大学や献体の会へ、お問い合わせください。

メモ 本人の意思が不明でも臓器提供は可能

臓器提供は、脳死後あるいは心臓が停止した死後にできます。本人が生前に書面で臓器を提供する意思を表示している場合に加え、本人の意思が不明な場合でも、家族の承諾があれば臓器提供できるようになりました。とはいえ、家族が判断に迷わないよう、臓器提供の意思がある場合は、その旨を家族に伝えておきましょう。



臨終後の儀式

家族の手で末期(まつご)の水を取る

医師が臨終を告げたら、家族の手で末期の水を取ります。「死に水を取る」ともいい、死の間際に水を求める欲求を満たすために行われてきたとされる儀式です。死後の世界へ送り出す儀式でもあり、伝統的な慣習として宗旨を問わず一般的に行われています。
新しい筆か、割りばしの先に脱脂綿をつけ、ガーゼをかぶせて白い木綿糸で巻いたものを用意します。それに茶わんの水を含ませて、故人の唇を湿らせます。
臨終に立ち会った人が順番に全員で行います。一般に、配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹の順で行われます。全員が終わるまで、故人を囲んで静かに見守りましょう。

[末期の水の取りかた]

  1. 茶わんと筆を用意します。茶わんには特に決まりはないので、家にあるものでかまいません。新しい筆がなければ、割りばしに脱脂綿をつけてガーゼで包み、糸で巻いたもので代用します。
  2. 筆に水を含ませ、死者の唇を軽くなぞります。

メモ キリスト教の臨終

キリスト教では神父、牧師が臨終に先立って行う祈りがあります。

[故人の遺体を清める]

ガーゼや脱脂綿で故人の体をふく

末期(まつご)の水の後に、故人の体を清めます。現在は、アルコールや水で絞ったガーゼや脱脂綿などで体をふくことが多いようです。体をふき終えたら、汚物や体液が出ないように、耳、鼻、口、肛門などに脱脂綿を詰めます。
これらの作業は、以前は家族によって行われていましたが、最近は、病院で亡くなった場合には看護師が、自宅で亡くなった場合には臨終に立ち会った看護師か葬儀社がやってくれます。

死に化粧をして着がえをさせる

体の清めがすんだら、死に化粧を施します。
まぶたを軽くなでて目を閉じさせ、下あごをもち上げて口を閉じさせます。面やつれしいたら、含み綿をほおに入れます。男性の場合はひげをそり、女性や幼児なら薄化粧をします。髪をとかして爪もきれいに整えます。
死に化粧を施したら、着がえを行います。仏式では僧や巡礼者の姿に似せた装束を着せるしきたりでしたが、最近では清潔なゆかたに着がえさせることが多くなりました。故人が生前に愛用していた服を着せることもあります。

男性の場合の死に化粧

髪をとかし、伸びているひげをきれいにそります。

女性の場合の死に化粧

髪をとかし、おしろい、ほお紅、口紅をさすくらいの薄化粧をします。

メモ エンバーミングとは

エンバーミングとは、故人の体を衛生的に保ったり、生前のきれいな姿に復元したりする遺体衛生保全処置のことです。遺体に防腐液を注入すること
で、長期間の保存が可能になります。
葬儀までに時間がかかるときや、外傷や長期大院によるやつれを自然な姿に修復したいときなど、故人の最期の姿を美しくできます。アメリカやカナ
ダでは亡くなった人の9割以上が実施しているといわれていますが、日本ではあまり普及していません。ただ、最近は故人とゆっくりお別れができると、利用する人が増えているようです。


遺体を安置する

遺体を寝かせる場所選びと布団選び

遺体が病院から家へ運ばれる前に、遺体を寝かせる場所と布団の用意をしておきます。
部屋は納棺がスムーズに行えるよう、広い場所を選ぶとよいでしょう。
布団は掛け布団と敷き布団を1枚ずつ用意します。蒸れによる遺体の腐敗を防ぐため、どちらも薄くて軽いものを。枕が低いと遺体の口が開いてしまうことがあるので、なるべく高いもの使いましょう。

布団に寝かせたら手を組ませて安置する

遺体を布団に寝かせたら、手を胸もとで組ませます。その手に、仏式の場合は数珠を、キリスト教式の場合はロザリオをかけます。
神式は手を組ませるだけです。顔は白い布でおおうようにしましょう。
仏式と神式は、遺体の頭を北側にして安置します。これを北枕といい、部屋のつごうでできない場合には、無理にする必要はありません。また、キリスト教式では特に決まりはありません。

[仏式の遺体安置例]

メモ 守り刀とは

仏教のなかで、浄土真宗以外の宗派では、遺体の上にかみそりやはさみなどの刃物を置くしきたりがあります。これを「守り刀」といい、魔よけの意味があります。守り刀は遺体の顔に刃先を向けないよう、胸の上や、お盆にのせて枕もとに置いたりします。宗派や地域により置きかたは異なるので、葬儀社に確認します。神式でも、胸もとや枕もとに刃物を置きます。


枕飾りを飾る

枕もとに枕飾りを設置する

遺体を安置したら、枕もとに「枕飾り」という小机を置きます。枕飾りは宗教によって形式が異なります。
仏式では、小机に枕飯、燭台とろうそく、線香立てと線香、花立てと花、りんなどを置き、火を絶やさないようにします。神式では、「案」と呼ばれる机に食べ物や榊などを供えます。キリスト教式では枕飾りの決まりはありませんが、一般的には、白い布を小机にかけ、聖書や花、ろうそくや十字架などを置きます。
いずれの場合も、自宅で用意できないものは、依頼すれば葬儀社がそろえてくれますが、枕飯は喪家が用意するようにしましょう。

[仏式の枕飾り]

宗派や地域によって異なりますが、この写真が一般的な例です。
左上から時計まわりに、花と花立て、水を入れた湯のみ、枕飯、燭台とろうそく、リん、香炉、線香と線香立て、使用ずみマッチ入れ。

[神式の枕飾り]

案(儀式用の台)か小机に白い布をかけて生饌(水、洗米、塩、酒)を三方に載せて供え、燭台にろうそくを立てて火をともします。花や榊も供えます。

[キリスト教式の枕飾り]

枕飾引こ特に決まりはありません。小机に白い布をかけて、燭台とろうそく、花などを供え、聖書や十字架などを置くのが一般的です。

メモ 枕飯は一膳飯

仏式では、1合分のお米をとがずに炊いたご飯を、故人が愛用していたご飯茶碗に1合分すべて残さず盛りつけた枕飯を飾るならわしもあります。ご
飯を分けないのは、生きている人に分けないためとされています。
枕飯の中央には、はしを一膳、まっすぐに突き立てる風習があります。地方によっては、1本ばしを突き立てたり、十文字に交差させることもありま
す。


枕経と枕勤め

枕飾りを飾ったら僧侶を迎えて枕経(まくらぎょう)を

仏式の場合、枕飾りをすませて室内を整えたら、僧侶を迎えてお経をあげてもらいます。
これを「枕経」といい、故人に読経を聞かせる、仏壇の本尊に対して最後のお勤めをする、などの意味合いがあります。
枕経は死んでいく人が不安にならないようにと、枕もとでお経をあげながら死を見取る習慣でした。本来の枕経は死後にすぐ行うものですが、最近は死後すぐに行うことが少なくなり、通夜のときにまとめて行うことが多くなってきたようです。

枕経の間、僧侶の後ろでともに祈る

枕経の間、遺族や親せきは僧侶の後ろに座り、故人の冥福をいっしょに祈ります。これを「枕勤め」といいます。
このとき、遺族の服装は、喪服である必要はありません。じみな色合いであれば、普段の服でかまいません。
また、枕経が終わった後も、遺体を納棺するまで、遺族が交代でろうそくの火と線香を絶やさないようにするのも枕勤めです。夜間などは無理をせず、できる範囲で火を絶やさないようにすればよいでしょう。
神式では、枕勤めを「枕直しの儀」といい、神官を招いて、家族そろって儀式を行いますが、最近は簡略化され、遺族だけが拝礼するようになっています。キリスト教では、枕勤めにあたるものはありません。

僧侶へのお礼は不祝儀袋に包んで、お車代だけを渡します。

メモ 北枕の由来

遺体を安置するときに、仏教では、遺体の頭を北向きに寝かせる「北枕」が基本になります。これは、仏教の開祖であるお釈迦さまが、頭を北に向け
て入滅(亡くなること)したことに由来します。部屋のつごうで北枕にできないときは、西に極楽浄土があるという西方浄土のいい伝えから、西枕にすることが多いようです。
神式では北枕か東枕にし、キリスト教では特に決まりはありません。


納棺をする

遺体を棺に納め故人の愛用品で飾る

枕勤めが終わった後、通夜を始める前に、遺体を棺に移します。納棺は、最近は葬儀社が行うことが多くなったようです。
遺体を棺に納めたら、故人の愛用品などを入れます。眼鏡や装飾品などのガラス製品、金属製品、果物などは、火葬炉設備の故障の原因になるので、棺のなかには入れないようにします。また棺には、遺体の腐敗を防ぐために、なかにドライアイスを入れます。
仏式の場合
遺体を棺に納めたら、手を組ませて数珠(じゅず)をもたせ、経帷子(きょうかたびら・僧侶や巡礼の姿になぞらえた死に装束)をかけます。以前は死に装束を遺族の手で着せていましたが、最近ではこのような形が増えています。遺体の上に「棺書」といわれる戒名を書いた紙をのせることも。

神式の場合

納棺の方法は、仏式とほぽ同じですが、納棺してから出棺するまで、朝と夕の一日2回、供え物をして拝礼する儀式があります。

キリスト教式の場合

カトリックでは、神父が納棺のことばをささげ、近親者の手で納棺をします。プロテスタントでも、牧師の祈りの後に近親者が納棺をします。

[棺の種類と選ぶ基準]

棺は素材や形もさまざまあり、葬儀の形式によっても使うものが違います。


通夜と葬儀の手配

死亡を確認したらすぐに寺、神社、教会に連絡

宗教にのっとった葬儀を行う場合は、死亡が確認されたら、なるべく早く、寺、神社、教会に連絡を入れ、死亡の報告と葬儀の依頼をします。
依頼先の寺、神社、教会に連絡する際、通夜、葬儀の日程、場所なども、相談しておきましょう。葬儀社との相談の前に調整をしておく必要があるからです。

[連絡内容と確認すべきこと]

寺、神社、教会に葬儀を依頼するときは、以下の点を伝えて相談しましょう。

  1. 死亡した人の名前、死亡日時を知らせる
  2. 通夜、葬儀の日程を相談する
  3. 葬儀の場所を相談する
  4. 戒名、法名の相談をする(仏式の場合)

[ 葬儀を依頼する寺院の決めかた ]


〔仏式〕寺院への依頼

菩提寺の僧侶と葬儀の相談をする

菩提寺には喪主か世話役代表が連絡し、速やかに死亡を知らせます。故人の名前、死亡日時を正確に伝え、まず通夜、葬式の日程、そのときの僧侶の人数などを決めます。
また、故人の人となりや生前の職歴などを伝え、故人にふさわしい戒名をつけてもらいましょう。
謝礼の金額は寺の格式や僧侶の人数などで異なりますが、菩提寺の場合は今後の付き合いも考えて、多めを心がけましょう。

仏式なら喪主か世話役代表が菩提寺に電話で連絡する

菩提寺とは自家が檀家(だんか)となっている寺のことで檀那寺(だんなでら)ともいいます。菩提寺への連絡は、正式には喪主か世話役代表が直接出向きますが、現在では電話で連絡することが多いようです。
菩提寺があるのにもかかわらず、近くの寺で葬儀を行うということは菩提寺に対して失礼な行為になります。菩提寺が遠方にあり頼めない場合は、電話をして近くの同宗派の寺を紹介してもらいます。この場合、近くの寺には葬儀のみを依頼し、戒名は菩提寺に頼みます。そうしないと菩提寺に納骨させてもらえなかったり、宗派に合わない戒名をつけられたりと、トラブルに発展してしまうこともあるからです。先祖代々続く菩提寺との関係を壊さないよう、注意しましょう。

仏式で葬儀を行うのであれば、僧侶に依頼しましょう。

メモ 菩提寺とは

先祖代々、または祖父母や両親などの墓や位牌を置き、菩提を弔う寺のことを菩提寺といいます。現代では菩提寺が遠方にある人が多くなり、葬式を
依頼するのもむずかしくなってきました。
どこの寺に連絡すればよいのかわからないという場合は、親戚や近親者に問い合わせ、宗派だけでもつきとめたいところ。それでもわからない場合は、
葬儀社に相談してみましょう。



戒名と位牌

戒名は通夜までに菩提寺からいただく

戒名とは、本来は仏弟子になったあかしとして修行を行った人に与えられる名でしたが、現在では、死者の成仏を願って死後に与えられるようになりました。
一般に、戒名は菩提寺の僧侶から通夜までにいただき、白木の位牌に書いてもらって祭壇に安置します。白木の位牌は四十九日の法要のころに、仏壇に置く正式な位牌と交換します。

戒名の謝礼は「御布施」として渡す

戒名をつけてもらう謝礼は、戒名料ということばが一般化していますが、「御布施」が正しいとされています。通夜や葬儀の読経料と合わせて、葬儀後に「御布施」として、まとめて渡します。
戒名の謝礼の相場は、院号や位号によって異なりますが、10万~60万円といわれています。金額がわからないときは、菩提寺に直接たずねても失礼になりません。

最近の位牌には、黒塗りのものだけでなく、クリスタル製のものもあります。

[戒名の格]

メモ 宗派による戒名の違い

仏名は、宗派によって呼び名が異なります。天台宗、真言宗、曹洞宗などは「戒名」と呼びます。浄土真宗は「法名」といい、男性には「釈」、女性
には「釈尼」という文字が入ります。日蓮宗では「法号」と呼び、「日」か「法」を男性に、女性には「妙」という文字をつけます。


神式、キリスト教式・神社、教会への依頼

神式の場合は自宅か斎場で葬儀を行う

神式の場合は、家と関係のある神社に連絡をして、神職と通夜祭(つやさい・通夜)や葬場祭(そうじょうさい・葬儀)の日程などを相談します。特定の神社がない場合は、葬儀社に相談して紹介してもらうこともできます。
神道では、葬儀は神社で行いません。自宅か斎場で行うことになりますが、最近は斎場で行うことが多くなっています。
忌み期間が終わるまで、死者の出た家の人は神社を参拝しないしきたりです。そのため、通夜祭や葬場祭の依頼は、世話役代表か葬儀社が代理人として行うこともあります。しかし、参拝しない、鳥居をくぐらないなどのしきたりを守れば、遺族が神社へ出向くことは可能です。直接お願いするときは、事前に連絡してからうかがいましょう。

キリスト教式は臨終のときに通夜と葬儀の相談を

キリスト教式の場合には、臨終のときに神父、牧師が立ち会うので、その場で通夜や葬儀の相談をします。教会以外の斎場で葬儀を行う場合にも、神父、牧師が出向いてくださるか確認します。臨終のときに神父、牧師が立ち会っていない場合には、死亡確認後すぐに所属する教会に連絡を入れましょう。
宗派がわからない場合は、葬儀社に相談して教会を紹介してもらいます。所属する信者以外の葬儀を行ってくれる教会もあります。

キリスト教では一般的に臨終に立ち会ってくれた神父、牧師に。通夜や葬儀の相談をします。

メモ 斎場を選ぶときの注意

葬儀の場所は、宗教にのっとつた儀式が行えるかどうかを確認して選ぶ必要があります。宗教者や葬儀社に相談しておきましょう。
宗教、宗派を制限している斎場や、マイク、焼香を禁止している公民館などもあるので、必ず事前に確認しておきましょう。


葬儀方針を決める

故人の希望を尊重し葬儀形態を決める

日本の葬儀のほとんどは仏式ですが、そのほかでも故人が信じる宗教や希望があれば、それにのっとった形の葬儀を行うのが通例です。また、最近では宗教とは関係のない無宗教形式で行われる、自由な葬儀を希望する人も少なくありません。いずれにしても、葬儀の形式は早く決めることがたいせつです。

形式や予算を考え葬儀の会場を決める

近年では住宅事情などから、通夜から葬儀、告別式までを自宅で行うケースは少なくなってきました。その一方、葬儀社や自治体が運営する斎場や、寺院に付設されている斎場を使うケースが増えています。斎場が全国的に急増しているのも要因のひとつでしょう。
地方によって差がありますが、仏式と神式の場合は、通夜は自宅、葬儀と告別式は斎場で行うという形態と、通夜から葬儀、告別式のすべてを斎場で行うという形態が、最近は多いようです。また、集合住宅の場合は、集会所や公民館を利用するケースも。キリスト教式の場合は教会で行うのが一般的です。
葬儀の形式や規模、予算に合わせ、また弔問者の交通の便なども考えて、いちばんよい方法で行いましょう。

最近では、自由葬、家族葬が多くなったため、新しいスタイルの斎場も増えています。

メモ 故人に家族がいない場合

故人に家族がひとりもなく、親せきもいない場合には、死亡地の市区町村長が火葬を行います。ただ、遠くても親せきがいる場合は、親せきが葬儀を
出すことになります。親しかった人たちで送りたいというときは、しのぶ会などを催すとよいでしょう。
また、喪主は友人、知人がなったり、複数で務めることもあります。


葬儀社を選ぶ サービスの内容

葬儀方針によって利用する葬儀社を決める

葬儀を行う業者は、葬儀を専門にしている葬儀専門業社のほかに、加入者が積み立てをして利用する冠婚葬祭互助会、JA(農業協同組合)や生協(生活協同組合)の葬祭部などがあります。
葬儀専門業社は、具体的な準備や進行などの葬儀に関するすべてのことを行えるので、急な死亡で何も準備していなかったときなどは心強いでしょう。なかでも、地域の慣習や事情をよくわかっているところが便利です。
葬儀社を選ぶ場合には、菩提寺や神社、教会に紹介してもらうという方法もあります。また最近では、斎場をもっている葬儀社もたくさんあります。
葬儀の段取りをまかせることになるのですから、信頼できる業者を選びたいものです。

[葬儀のサービス一覧]

葬儀社の基本セットに、オプション項目を追加するシステムでのメニュー例を紹介します。

基本セット
ロ祭壇、生花
口枕飾り、後飾り
口焼香用具一式
口司会進行
口通夜、葬儀。
告別式スタッフ
会場設営
口遺影、位牌
口供花、供物
口会場装飾(鯨幕・提灯)
口座布団レンタル
ロ花環
口受付設備(テント、テー
ブル、芳名帳、筆記用具)
口門前飾り(忌中札ほか)
口道順表示紙
故人のために準備するもの
口死に化粧道具
口湯濯
口防腐処置(ドライアイス)
口脱臭剤
口枕花
口死に装束一式
口棺
口骨つぼ
参列者へのサービス
ロ会葬礼状
口会葬返礼品
口通夜ぶるまい
口精進落とし
口飲み物
口茶器、食器レンタル
移動手段の手配
口霊柩車
口寝台車
ロマイクロバス、ハイヤー
その他
口会場使用(式場、安置室)
口会場スタッフ
ロ記録写真
口役所などの諸手続代行
口喪服レンタル
ロ僧侶、神職、神父、牧師
などの手配
葬儀社から火葬場への支払い
口火葬料金
口休憩室使用料
口飲み物代

メモ 葬儀社が代行してくれる業務

依頼できることは葬儀社によって異なります。基本料金のなかにサービスは何が入っているか事前に確認します。

会葬礼状は返礼品とセットにして葬儀社に依頼するとよいでしょう。


葬儀社を選ぶ いろいろな葬儀社

評判がよく信頼できる葬儀社を選ぶ

互助会や生協に入会している場合は、そこに連絡をして葬儀の依頼をします。地域によっては、村や町内の世話役が葬儀の準備いっさいを取り仕切るところもあります。しかし、菩提寺もなく葬儀が初めての場合は、葬儀社に依頼してもよいでしょう。
まず遺族は、臨終後に遺体を引き取る寝台車の手配をします。ここから葬儀社にまかせることが多いようですが、遺体の搬送と葬儀を、別のところに依頼してもかまいません。

葬儀社選びのポイント

[いろいろな葬儀社]

冠婚葬祭互助会 互助会の会員は毎月一定額を積み立てていると、葬儀を行うときに契約に応じたサービスを提供してくれます。
生活協同組合 生協加入者を対象としたサービスで、生協がその地域の葬祭業者と提携して、組合員が低料金でサービスを受けられるシステムです。
JA(農業協同組合) 葬祭部門があり、組合員向けに葬祭サービスを提供。料金やサービス内容は各地で異なります。
自治体 地方自治体が指定する葬儀社を利用することで、低料金で葬儀を行うことができます。サービスや内容、申し込みかたなどは各自治体で異なります。
葬式専門業者 大手のチェーンから、小規模なところまで多数あるので、希望する業者を選べます。大手チェーンは葬式、告別式に関する情報が豊富で、さまざまな要望に対応してくれます。

 


葬儀の日時

僧侶や葬儀社と相談し日程、時間を決める

日程については、まず僧侶、神職、神父、牧師に相談をします。その次に葬儀社と相談をして寺や神社、教会のつごうを優先させましょう。
法律では、感染症などの特別な場合を除いて、死後24時間は火葬できません。そのため、死亡した日に納棺して、翌日の夜に通夜をし、翌々日に葬儀、告別式を行うというのが一般的です。
また、暦の友引の日と年末年始は休業している火葬場が多いので、その場合は葬儀を延期することがあります。
諸事情により死亡した翌日に通夜が行えない場合には、近親者だけで仮通夜を営みます。そして翌々日の夜に一般の弔問者を呼んで、本通夜を行います。

通夜は夜 葬儀、告別式は午前から午後

時間は、通夜はだいたい午後6時ごろから9時までに行います。葬儀、告別式は午前9時から午後3時の間に、1時間ほどという場合が一般的です。斎場での葬儀の場合は、借りられる時間の制約もあるので、葬儀社ともよく相談しましょう。

メモ 友引の日が忌み日とされる由来

友引の日は、文字の連想から「友を引く」と解釈され、この日に葬儀をすると、死者が友人を呼び寄せるという迷信により、葬儀を避けるようになり
ました。いい伝えにすぎませんが、葬儀や火葬を休業する火葬場も多いので注意が必要です。
ただ最近では、友引でも火葬を行ってくれるところが増えているようです。



葬儀の費用

葬儀にかかる費用の種類は3つ

葬儀の費用は大きく分けて、葬儀社への支払い、飲食接待費、寺、神社、教会などへのお礼です。次の表は葬儀費用の平均金額ですが、葬儀が多様化している現在では、地域や葬儀の形態によって金額に大きな差が出ます。これ以外にも「雑費」などがプラスされます。

[葬儀費用の平均]日本消費者協会調べ(2010年)

葬儀社への支払い
枕飾り、祭壇、棺、遺影、受付用品、式場飾り、霊柩車、収骨容器、会葬礼状、火葬料、送迎用車、人的サービスなど。
126万7000円
通夜からの飲食接待費
仏式では通夜ぶるまい、精進落とし(神式では直会、キリスト教式では茶話会)、火葬場での接待など。
45万5000円
寺院費用
仏式では僧侶へのお布施(読経や戒名)、御膳料(神式では神職への謝礼、キリスト教式では教会への謝礼と神父、牧師へのお礼)。
51万4000円
葬儀費用の総計 199万9000円

葬儀費用にあてるお金を考える

葬儀費用の財源として考えられるのは、香典、葬祭費などの公的補助、故人の預貯金、生命保険など。残りは喪家の負担となります。
そこで注意したいのは、故人の口座の凍結です。銀行の口座は、本人の死亡が確認された時点で凍結されてしまいます。ただ、葬儀費用として一定の金額までなら引き出しが可能な機関もあります。その場合、家族であることを証明する書類を持って窓口で説明しましょう。それ以降、お金を引き出せるのは相続手続きが完了してからです。急なお金が必要になることもあるので、事前に引き出しておきましょう。
葬儀の費用は相続税の対象外になります。葬儀社への支払いや飲食代、宗教関係者への支払いなどの領収書は取っておきましょう。

メモ 葬儀の規模は無理のないように

葬儀の規模は、故人の遺志、社会的地位、交際範囲、喪家の意向、経済的条件などから決めます。葬儀社との打ち合わせでは、もっとも重要なこととなるので、慎重に話し合いましよう。
身内だけで簡素に行うか、広範囲に弔問してもらうか、僧侶の人数はどうするか、葬儀の場所はどこにするかなどで、規模が違ってきます。
故人の遺志と喪家の意向を考慮して、無理のない範囲で検討しましょう。


葬祭料の例

プランの見積もりは必ず取る

葬儀社が決定したら、葬儀の日程、場所、宗教や宗派、予算や弔問者の予想人数などを葬儀社に伝え、プランを出してもらいます。
このときに、葬儀についての思いや要望も伝えておきましょう。
希望に応じたプランができたら、必ず見積書をもらい、金額や内容をチェックすることがたいせつです。ここでセットに含まれるものや別料金になるものなどの内容をはっきりさせておくと、後のトラブルを避けられます。

[葬儀費用の概算例]

斎場で仏式の葬儀を行い、参列者を50名(うち親族10名)と想定した場合の見積もりの例です。

基本費用(105万1810円) 生花祭壇基本葬儀料金 63万円
会館式場使用料 15万7500円
御棺(桐) 10万5000円
遺影(四つ切サイズ) 2万6250円
防腐処置(ドライアイス2日分) 2万1000円
寝台車(病院~自宅)10kmまで 1万5850円
防水シーツ 5250円
寝台車(自宅~式場)10kmまで 1万5850円
国産霊柩車(式場~火葬場) 1万9110円
マイクロバス(式場~火葬場往復/1台) 3万800円
ハイヤー(式場~火葬場往復/1台) 2万5200円
変動費用(24万6960円) 会葬礼状(100枚セット) 1万500円
返礼品(500円×50個) 2万6250円
通夜料理(3,000円×30名分) 9万4500円
精進落とし(3,000円×10名) 3万1500円
火葬料金(最上等) 4万8300円
火葬場休憩室使用料 2万2575円
収骨容器一式 1万3335円
葬儀費用の総計(税込) 129万8770円

メモ 葬儀場による金額の違い

費用は葬儀を行った場所によって大きく違います。大規模な寺院なら50万~100万円、小規模な寺院なら20万~40万円かかるのに対し、公営の斎場
なら5万~10万円で利用することができます。

メモ 係への心付けの目安

世話役へのお礼は、後日お礼の品を送るのが通例です。ひとりにつき3000~5000円程度が目安。ただし、世話役代表には、それなりの金額を包むのが礼儀。表書きは「御礼」とします。


喪主や世話役を決める

通夜までには喪主を決めておく

喪主は葬儀に関して最終決定をする責任者です。通夜、葬儀の間は、遺族の代表として故人のそばに付き添い、弔問を受けるのが大きな役目。そのため、通夜までに喪主を決めておく必要があります。
以前はその家の跡継ぎが喪主を務めるとされ、故人の妻や逆縁(親より先に子どもが亡くなった場合)の親は喪主にならないというしきたりもありました。しかし、最近では故人ともっとも縁の深かった人が務めるようになっています。
一般的には故人の配偶者、配偶者が死亡している場合や高齢の場合には子、子がいない場合は親か兄弟姉妹が喪主になります。喪主が未成年のときは、近親者が後見人となり、喪主を助けます。

喪家の事情に詳しい人に世話役代表を依頼する

世話役代表は、葬儀社と相談しながら葬儀の指揮をとる役割です。葬儀の主催は遺族ですが、世話役代表はすべての日程が滞りなく進むよう葬儀を仕切ります。日ごろから付き合いのある親せき、喪主や故人の親友など、経験豊かで統率力のある人が適任です。
世話役代表は、喪主から依頼をし、引き受けてもらえたら進行上の希望などを伝え、住所録と進行に必要な当座の現金を預けます。各世話役の人選をまかせてもかまいません。

世話役など、喪家側の立場の人はリボンをつけます。

メモ 世話役の服装

世話役は喪家側の立場になるので、葬儀の打ち合わせ段階でも、じみな平服が好ましいでしょう。

葬儀に必要な係とおもな仕事

世話役代表が葬儀の指揮をする

世話役代表は世話役を申し出た人たちの分担を決め、各世話役と連絡を取りながら、葬儀全般の指揮をします。喪主や遺族代表に代わって、葬儀社と通夜、葬儀、告別式の進行の打ち合わせをし、さらに葬儀、告別式では葬儀委員長を務めることもあります。
世話役は、世話役代表の指示にしたがい、進行に応じて役割をこなします。葬儀の規模や会場の大きさに応じて、係の種類や人数は変わりますが、小規模の葬儀なら2~3人、大規模なら数十人が必要になります。なお、葬儀社の斎場を利用する場合は、ほとんど斎場の係員が世話役を代行してくれます。

[一般的な葬儀の世話役]

一般的な葬儀では、上の図のような係が最低でも必要です。大規模な葬儀の場合は、さらに細かい係をつくります。

メモ 大きな葬儀の場合に必要なそのほかの係


世話役の役割とスケジュール

  世話役代表 受付係 会計係 進行係 接待・台所係
通夜前 喪主、葬儀社と葬儀全般の打ち合わせをして、各世話役に指示をします。 会葬者芳名帳、香典帳、供物記帳簿や筆記用具をそろえておきます。 喪主か世話役代表から現金を預かります。会計簿を作り、すべての費用の記帳の準備をしておきます。 遺族、世話役代表、葬儀社と通夜の進行についての打ち合わせをし、弔電の整理をします。 通夜ぶるまいについて相談して決めます。遺族や世話役の食事の用意も。
通夜 喪家側として通夜に参加し、僧侶や弔問者へのあいさつをします。  弔問者を受け付け、芳名帳に記入してもらいます。香典や供物を会計係に回します。 受付と祭壇にささげられた香典をもれなく香典帳に記入し、管理。 遺族、世話役代表、葬儀社と葬儀、告別式の進行の打ち合わせをします。 弔問者や僧侶を茶菓で接待し、通夜ぶるまいをします。遺族や世話役代表の夜食の用意も。
葬儀前  喪主、僧侶、葬儀社と葬儀、告別式の最終的な打ち合わせをします。 会葬者芳名帳、香典帳、供物記帳簿や筆記用具を点検、整理しておきます。 香典帳の整理をし、火葬場の係員、霊きゅう車の運転手などへの心づけの準備もしておきます。 世話役代表、司会者と葬儀、告別式の進行の打ち合わせをします。弔辞や弔電の有無、順番を確認します。 接待用の茶菓を用意し、火葬場での茶菓を手配します。世話役の昼食の準備も。
葬儀、告別式 式に参列し、僧侶、弔問者へのあいさつをします。  弔問者を受け付け、芳名帳に記入してもらいます。香典や供物を受け付けて会計係に回します。 香典帳に記録します。 葬儀、告別式を予定どおり行えるように進行します。 僧侶、弔問者を茶菓で接待します。
出棺、火葬 霊きゅう車の後ろから火葬場へ向かい、拾骨まで立ち会い、遺族と一緒に帰ります。 出棺を見送り、後片付けをします。 出棺を見送り、帳簿の整理をします。 出棺を見送り、後片付けをします。  出棺を見送り、後片付けをし、精進落としの用意をします。
骨迎え 還骨(かんこつ)法要に参加し、葬儀終了後は、法要についての相談にのります。 お骨(こつ)を迎えます。 すべてを整理して、帳簿の整理を引き継ぎます。 お骨(こつ)を迎えます。 お骨(こつ)を迎えます。

自宅葬を行う場合の準備

葬儀で使うものや謝礼の準備をする

葬儀の準備は、まかせられるところは葬儀社にまかせて、喪家がしなくてはいけない準備に、早めに取りかかりましょう。

  1. お礼に渡す現金の準備
    僧侶へのお車代や御膳料、世話役への心付けなど、ある程度まとまった現金が必要になるのであらかじめ銀行などで用意しておきましょう。
  2. 部屋の片づけ
    葬儀社が来る前に、ざっと部屋の整理整頓をしておきます。特にトイレは多くの人が使うので、きれいにしておきましょう。
  3. 葬儀に使うものの準備
    コップやきゅうすなどの茶器類や座布団など、葬儀で使いそうなものを用意しておきます。遺影に使う写具も探しておきましょう。

近隣や町内会に事前に連絡する

自宅で葬儀を行う場合には、近隣の人たちに、人や車の出入り、花環の設置などで迷惑をかけることが考えられます。遺族は早めに、世話役代表といっしょに近隣の町内会にあいさつに行き、通夜や葬儀の日時を伝えて、協力をお願いしておきましょう。
特に集合住宅の自宅で葬儀を行う場合は、迷惑をかけることも多くなるので、日ごろ付き合いがなくても出向いてあいさつをしておきます。
近所の家の前を駐車スペースに借りたり、荷物を置かせてもらったりした場合は、葬儀後にきちんとお礼をします。地域によって相場が決まっているところもありますが、数千円から1万円程度です。現金ではなく商品券などを包んでもよいでしょう。

メモ 神棚封じをする

神棚がある家は、忌明けまで神棚の扉を閉めます。扉がない場合は白い紙をはって封じます。わからないことがあったら葬儀社に相談しましょう。



自宅葬を行う部屋の準備

部屋割りは葬儀社と相談して決める

自宅で通夜、葬儀を行う場合には、設置する式場となる部屋、僧侶の控え室、弔問者の控え室、通夜ぶるまいの部屋などが必要です。さらに片づけた家具などをまとめて置いておく部屋や乳幼児のための部屋、遠方から来る人用に着がえの部屋があると便利です。いずれの部屋も装飾品や家具を片づけて、広く使えるようにしておきます。部屋が足りない場合には、屋外にテントを設けたり、近隣のお宅にお願いして一室を借りたり、家具を預かってもらったりします。
祭壇はスペースをとるので、式場となる部屋は弔問者が出入りしやすい広い部屋を選びましょう。祭壇の準備をしてくれる葬儀社に希望を伝え、どの部屋が使いやすいかを見てもらうとよいでしょう。

祭壇を設置し玄関に忌中札をはる

式場となる部屋の準備ができたら、葬儀社に祭壇を設置してもらいます。
門と玄関は開け放して、自由に出入りできるようにしておきます。弔問客の出入りにじゃまになるものは片づけておきます。玄関には、「忌中札」をはって、葬儀の日時や場所を知らせます。忌中札や道順表示の看板は葬儀社が用意してくれますが、世話役に最寄りの駅やバス停に案内係として立っても
らってもよいでしょう。

忌中札は、竹のすだれを裏返して、その上にはることもあります。

メモ 葬儀社に依頼しておくこと

受付の設置と外の飾り付け
受付は玄関先や門外にテントを張るのが一般的。外の飾り付けは、どの程度の規模にするのかを決めておきます。
暗くて弔問者が困らないよう、玄関までの通路には照明を置くなど門の周辺は明るくしておきましょう。
道順案内表示、案内人の準備
案内人の配置か道順案内表示の設置、警察署に道路使用許可の申請をしてもらいましょう。葬儀社には道順案内で立ってくれるサービスもあります。


遺影と祭壇の飾りかた

遺影は故人の人がらが表われているものを

遺影には故人らしさが表れている写真、故人が気に入っていた写真のなかから、できるだけ最近のものを選びます。証明写真のような堅苦しいものや暗い表情のものではなく、正面を向いて、ややほほえんでいるものがよいでしょう。集合写真などでもかまいません。
遺影用に引き伸ばすときは、背景や服装を修正して変えることもできます。

遺影写真は、ピントが合つていないと引き伸ばしたときにぽやけてしまいます。スナップ写真でもデジタル処理で遺影用に使用することができます。

遺影、位牌は中央に。供花は祭壇の両側に。
祭壇の飾りかたは、宗派によって異なりますが、一般的には、位牌、遺影、供物、供花を置き、祭壇の前の焼香台には香炉、りん、ろうそくをのせます。

[祭壇の飾りかたの例一仏式]

祭壇の飾り付けは葬儀社が中心に行ってくれます。特に神式の場合は、魚や肉、酒、米、塩、水など、準備するものが多いので、葬儀社ときちんと確認をしましょう。個人の愛用品を並べてもよいでしょう。


遺族の装い 男性

喪家側は正喪服を着用するのが基本

喪家は、通夜、葬儀ともに正式な喪服を着用するのが一般的です。ただし、身内だけの通夜なら、服装に決まりはありません。
男性の洋装はモーニングコートですが、これは昼の正礼装なので通夜では着用しません。
喪家も略礼装のブラックスーツで通すのが一般的です。

和装

洋装

メモ 喪章とは

「喪章」は服喪中にあることを表すもので、腕章型とリボン型の2種類があります。腕章型は、左腕に巻く黒い布で、遺族がつけるものですが、世話役
や社葬の場合は社員もつけます。リボン型は、おもに葬儀委員長など来賓に相当する立場の人がつけます。
また、喪章は喪家であるしるしなので、一般会葬者が喪章をつけることはマナー違反になります。


遺族の装い 女性

和装も洋装も黒無地・黒小物が一般的

和装の場合は、黒無地の染め抜き五つ紋付き。襟合わせをきちんと着ます。洋装は、黒無地のアフタヌーンドレスが正式ですが、ワンピースやスーツが一般的。

和装

洋装

メモ 喪服をもっていない場合

喪服をもっていなかったり、準備が間に合わなかった場合は、葬儀社から衣装を借りることもできます。
ただし、下着や足袋は含まれていないので、最低限のものは自分で用意しましょう。

メモ 子どもの喪服

子どもは学校の制服を着ます。制服がない場合は、黒やグレーなど色がらの入っていないシンプルなデザインのものにし、できれば喪章をつけます。



冠婚葬祭早引き事典シリーズ

① 教えて 祝儀袋の表書き
② 喜ばれる 中元・歳暮の贈り方
③ バッチリ決める!訪問のマナー
④ 大切なお客様の おもてなし
⑤ おいしくいただくテーブルマナー
⑥ 『手紙の書き方』これで解決!
⑦ これで安心!結婚式に招待されたら!
⑧ 仲人を頼まれたら
⑨ 婚約・結納のしきたり
⑩ 結婚披露宴のプランニング
⑪ 結婚式挙式のプランニング
⑫ 出産から成人まで!わが子のお祝いごと
⑬ 大切にしたい人生の記念日・お祝いごと
⑭ 暮らしの歳時記
⑮ お葬式参列のしきたり
⑯ ご臨終!突然「遺族」になったら
⑰ 仏式のお通夜・お葬式
⑱ 神式・キリスト教式のお葬式
⑲ 終活・生前にしておきたいこと
⑳ お葬式 Q&A よくあるご質問
㉑ お葬式が終わってからのこと
㉒ お墓と納骨のこと
㉓ 四十九日・年忌法要の行い方

 

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