高齢者の今までの食事では6人に1人が栄養失調!?

高齢者の食生活

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シニア世代は6人に1人が「栄養失調」!?

生活習慣病、メタボ、隠れ肥満などの対策から、食事の量を減らし、好きな食べ物をぐっと我慢してきた我ら中高年。

それが今、国の調査によると65歳以上のおよそ6人に1人に「栄養失調」の恐れがあるというんです。しかも、やせている人だけでなく、太っている人も要注意だとか!栄養失調になると、要介護になるリスクや死亡のリスクが2.3倍になるというデータまで出て来て、「なんじゃそりゃ!」と言いたくなりますね。

栄養失調を防ぎ、健康で長生きするための、食生活のポイントを調べてみました。

肥満こそが諸悪の根源!でしょ? ところで「肥満」って?

欧米人と日本人

体格を表す一般的な指標として、用いられるのが体格指数、BMIのことです。体重(kg)を身長の二乗(m2)で除したものですね。例えば、体重60kgで身長が160cmの人のBMIは、60kg÷1.6m÷1.6mで約23.4kg/ m2となります。

このBMIは、数値が高くなるほど肥満度が高くなります。一般に「肥満」とされているのは、BMIが25kg/ m2以上。この数値でみると、日本人成人の男性で29.1%、女性で19.4%が、つまり約4人に1人が「肥満」ということになります。

ただ、肥満者の割合が6割を超える米国と比較すると、日本人における肥満者の割合は半分以下ですし、しかも、日本の肥満者の年次推移をみると、男性はこの10年間で大きな変化はありませんが、女性では肥満者が減少傾向にあり、特に20代女性の「痩せ」は増加しています。

これまで、米国を中心とした欧米での研究から、肥満になると種々の健康被害が発生することが明らかになり、低カロリーな食品が好まれるようになりました。欧米で広まったこうした情報が日本にも伝わり、「脂っぽいものはダメ!」、「カロリーは徹底して抑えるべし!」、といった粗食ブームとなりました。

しかし、そもそも日本と米国では、肥満者の割合が異なっているわけです。しかも日本人の中でも、性別や年代によっては痩せ傾向にある集団すら確認できています。

これに加えて、高齢者の場合は、逆に栄養失調というわけですから、これまでの「常識」も、再検討する必要がありそうです。

栄養失調!?質素な食生活こそ長生きの秘訣では?

高齢者の栄養失調 その背景にあるアルブミン値の低下

質素な食生活を保ち、適度な運動もしている、一見、元気な高齢者がなぜ栄養不足に陥るのかというと、鍵はアルブミンという血液成分の低下が関係しているとのこと。

独立行政法人 東京都健康長寿医療センターのホームページには、このアルブミンが低い人たちは、そうでない人たちより生存率が低い、つまり、長生きできない傾向があるほか、認知症の前段である認知機能の低下を引き起こすリスクが2倍、脳卒中、心臓病のリスクは2.5倍に上がる、ということも紹介されています。

アルブミン低下のリスク

アルブミンは、肉や魚などのたんぱく質をもとに体内で作られるもので、筋肉や血管、免疫細胞などの機能に不可欠な成分です。そのため、アルブミンが減ると、筋肉が落ち、血管がもろくなり、免疫機能も低下します。

年をとると、多くの場合、アルブミンを作る力が徐々に弱まる傾向にあります。これが、いわゆる老化です。だからこそ、高齢者は若い時以上に意識して、肉などのたんぱく質を多くとらないと、アルブミンの減少が加速。老化が早まり、さまざまな病気が進行する要因となるのです。

高齢者が栄養失調に陥らないためのポイント

栄養失調を防ぐカギ(1)65歳を超えたら、総コレステロール値は高めがいい!

一般的に総コレステロールの基準値はおよそ120~220mg/dLとされますが、最新の研究で、65歳を超えたら、コレステロールが高めのほうが長生きすることがわかってきました。

コレステロールは、体の細胞膜に欠かせない重要な役割をしているにもかかわらず、年を取れば取るほど壊れやすくなります。健康長寿について長年研究を進めてきた研究者(※)によると、「年齢に応じて、コレステロールの基準値を見直したほうがいい」そうです。

65歳以上の方の総コレステロール値の理想値は、

  • 男性180~260mg/dL
  • 女性200~260mg/dL

なお、コレステロールが多く含まれる食材は、卵・いくら・数の子・レバー。卵だと、毎日1個を目安に食べるといいそうです。

栄養失調を防ぐカギ(2) 「肉」を食べて「アルブミン」を増やそう!

栄養失調を防ぐカギ2つめは「肉」。

肉には、たんぱく質の一種「アルブミン」のもととなる栄養素がたっぷりと含まれているからです。これまでの研究で、血液中のアルブミン値がさまざまな病気と関係していることがわかってきました。

厚生労働省「呼吸器感染症の分析疫学研究班(代表 廣田良夫)」が、65歳以上の肺炎患者50人と、かかっていない人110人を調べたところ、アルブミン値が低い人たちは、それ以上の人たちに比べて肺炎のかかりやすさが9.1倍に。

さらに、東北大学などの調査で、70歳以上の高齢者832人を3年間追跡調査したところ、要介護になったり亡くなったりする人の割合が、2.3倍になりました。

アルブミン値は、血液検査で調べることができます。

栄養失調を防ぐカギ(3) 「10食品群を食べよう!」

肉が苦手でも、アルブミン値を効率よく上げることができます。それは「10食品群を毎日一口ずつでもいいから食べること」です。

秋田県大仙市で、1,000人のお年寄りがこの10食品群チェックシートを用いたところ、4年間でアルブミン値の平均値が4.1g/dLから4.3g/dLに上昇しました。

健康長寿の「食と栄養」— タンパク質摂取の重要性 —

いつまでも健やかに過ごす秘訣は、なにより食生活にあります。栄養面から考えると、良質なタンパク質を適切に摂取することは、ロコモ・サルコペニア対策にはきわめて重要な要素です。さらにタンパク質を中心に、多彩な栄養素をバランス良くとることは、いつまでも健康な身体を保つための秘訣といえそうです。

日本人の食生活におけるタンパク質摂取量の推移

この飽食の時代にあっても、ここ10年ほど日本人の食生活におけるタンパク質の摂取量が低下しています。摂取量は、男女を問わず若年層から高齢層まで幅広い層で低くなっています。このような状態は、高齢者にとっては、ロコモやサルコペニアが進行し、低栄養による転倒や骨折などが多くなり、それをきっかけに要介護、寝たきりとなるケースが今後も増えていくと考えられます。また若年層や中高年層にとっても、将来ロコモやサルコペニアとなる時期が早まる恐れがあります。

血清アルブミン値と生存率

血清アルブミン値と生存率

タンパク質と生存率には一定の関係性が伺えます。

血清アルブミン(タンパク質)値を調査すると、この値が高いと生存率が高く、逆に低いと生存率は低くなります。つまりタンパク質の栄養状態が良いほど老化速度が遅く、疾病リスクも低いと考えられます。タンパク質の栄養状態が悪いと、老化を早め骨格や筋肉量が減少し、ロコモやサルコペニアとなる可能性が高くなります。タンパク質をしっかり摂取することが、老化を遅くし、健やかなシニアライフを過ごす鍵といえそうです。

 

血漿中に含まれるアルブミン。血漿タンパク質の中では最も量が多くタンパク質量の指標としやすい。水に最も溶けやすく、脂肪酸・胆汁色素・薬剤・イオンなど種々の物質の運搬や血液コロイド浸透圧の維持などの役割をもつ。

 

健康長寿の「食と栄養」 — 栄養バランスの良い食生活を! —

タンパク質の量の確保と同時に食事の偏りがなく、栄養バランスの良い食事を摂ることも重要です。近頃では独居老人世帯も増え、食事に気を使わなくなり、栄養のバランスが崩れていることが懸念されます。バランスのとれた栄養を摂取することは、今後の大きな課題の一つといえそうです。

1日10の食品群を食べる TAKE10! プログラム

1日10の食品群を食べる TAKE10! プログラム

きちんといろいろな食品を食べることは、栄養バランスの良い食事の基本であり、とても大切なことです。ここでは1日に10の食品群をおかずとして食べることで、高い栄養バランスが確保できる食事をおすすめします。それは健やかな身体を維持し、さまざまな病気を防ぐことにも繋がり、しかも、老化のスピードを遅らせることにも貢献します。特定の食品に偏らず、肉も魚も野菜も牛乳も、とにかくいろいろな食品を食べることを心がけましょう。
アクティブシニア「食と栄養」研究会では、国際生命科学研究機構(ILSI Japan)が提唱する、1日10の食品群を食べるTAKE10プログラムを推奨しています。

下の採点表でチェックしてみましょう。10の食品群ごとに「食べた場合」は1点「そうでない場合」は0点をつけます。最大で10点になります。さて、今日のあなたは何点?

バランスよくいろいろな食品を食べていますか?今日のあなたの点数は?

出典:BMC(Bio Med Central) Geriatrics,Community-based intervention to improve dietary
habits and promote physical activity among older adults: a cluster randomized trial

元気で長生きのための食生活の目標

  1. 3食のバランスをよくとり、食事を抜かずに きちんと食べましょう。
  2. 油脂類の摂取が不足しないようにしましょう。
  3. 肉、魚、乳製品、卵などの動物性たんぱく質を十分に食べましょう。
  4. 肉と魚の摂取は1:1の割合に。
  5. いろいろな種類の肉を食べましょう。
  6. 牛乳は毎日200ml以上飲むようにしましょう。
  7. 野菜は緑黄色野菜(にんじん、かぼちゃ、ほうれんそうなど)や根菜(大根、ごぼう、いもなど)など、いろいろな種類を毎日食べるようにしましょう。
  8. 食欲がないときはおかずを先に食べ、ご飯の量を減らしましょう。
  9. いろいろな調理のしかたや食品の正しい保存法をおぼえましょう。
  10. 酢、香辛料、香り野菜(ねぎ、にんにくなど)を十分に取り入れましょう。
  11. 調味料を上手に使っておいしく食べましょう。
  12. 和風、中華風、洋風と、いろいろな料理を食べましょう。
  13. 家族や友人との会食の機会をたくさんつくりましょう。
  14. かむ力を維持するために、義歯は定期的に点検を。
  15. 「元気」のための健康情報をすすんで取り入れましょう。

(参考:東京都老人総合研究所食生活指針)

まとめ

高齢者の食生活は、それまでの自分へのご褒美

高齢者は、長い間、社会や家族のために頑張ってきました。60歳過ぎたら荷を軽くし、少しだけ贅沢な食を楽しみ、残った人生を生き生きと!

  1. 高齢者は、摂生をし過ぎず、少しだけ贅沢な食生活にしましょう。
  2. 旬の野菜に加え、肉などのたんぱく源も出来るだけいただくようにしましょう。
  3. 食事は出来るだけ美味しくいただける工夫をしましょう。

 

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