2018年の夏以降、厚生労働省の毎月勤労統計の巡って二つの問題が報じられました。特に2019年1月になって分かった毎月勤労統計の「不適切」処理問題は、長年にわたる組織的な問題のようで、解決にはかなりの労力や費用が必要になりそうです。
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これを『政争の具』としていては国益が損なわれる
野党側が責任追及の声を上げ始め、国会でも現政権への責任追及をめぐって丁々発止の応戦が繰り広げられるでしょう。
ただ、もし、こうしたやりとりが、党利党略のためだけに繰り返されてしまうとすれば、それは、今の私たち、さらには将来の日本のための国の施策がストップしてしまうことにもつながります。それこそ、国にとっての損失です。
16年もの長きにわたる問題のようですから、関係したのは、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦の各内閣ということになります。こうした問題の蒸し返しのみで、現在と将来の国益を失うことの方が、より大きな国難と言えるのではないでしょうか。ことさら、現政権批判のためだけにこの問題を取り上げる政党や国会議員などがいるとしたら、それは「国民の生活よりも本音は党利党略が大事」と白状しているようなものです。
マスコミには、話題性や視聴率アップのために、週刊誌やワイドショー的な過激な煽り立て報道をしないようお願いしたいところです。
「はじめに結論ありき」のための統計では?
今回の問題の原因究明や、それによって生じた雇用保険等の補償などは、徹底して行うべきことは言うまでもありません。
しかし、一番重要なことは、こうした不適切な統計を根拠・背景として推し進められてきた政策や国の施策が、本当に国民のために正しいものだったのか、という問題です。政府や官僚などが、自らの政策を正当化するために、その裏付けとして『都合のいいような数字を作ってきた』とすれば、その体質こそ問題視すべきかもしれません。
この問題は長年続いてきたわけです。「過去」があって「現在」があります。果たしてこれまでの政策には過ちがなかったのかという、事実に基づく冷静な検証が求められます。
2019年は、元号が変わり、新しい時代を迎えます。新たな冷戦(グレイ・ウォー)とも呼ばれている米中の貿易摩擦問題、移民・難民であえぐ世界の国々、イギリスのEU離脱、加速する格差の広がりなど、党利党略・私利私欲を乗り越え、解決していかなければならない問題が山積みです。ぜひ、未来志向の対応がなされ、誇りと希望の持てる日本を築き上げていって欲しいものです。
また、私たち国民も、そうした聡明で、志ある議員を選出していくための、真贋を見極める力を備えたいものですね。
第一の問題 調査対象を入れ替えた結果、所得が過大に上昇「↑」した?
1回目の問題は、2018年9月に、西日本新聞の記事で明らかになりました。
これは、勤労統計調査の調査対象となる事業所群が新たな手法で入れ替えられた結果、『対 前年比従業員給与が増加している』かのような統計結果となったものです。内閣府は、疑問の声を受けて、統計を見直し、修正した内容を再発表する、としていました。
でも、国民感覚からすると、『そういう統計は今一つ信用できない』というのが正直なところでした。
統計所得、過大に上昇 政府の手法変更が影響 専門家からは批判も政府の所得関連統計の作成手法が今年に入って見直され、統計上の所得が高めに出ていることが西日本新聞の取材で分かった。調査対象となる事業所群を新たな手法で入れ替えるなどした結果、従業員に支払われる現金給与総額の前年比増加率が大きすぎる状態が続いている。補正調整もされていない。景気の重要な判断材料となる統計の誤差は、デフレ脱却を目指す安倍政権の景気判断の甘さにつながる恐れがある。専門家からは批判が出ており、統計の妥当性が問われそうだ。 高めになっているのは、最も代表的な賃金関連統計として知られる「毎月勤労統計調査」。厚生労働省が全国約3万3千の事業所から賃金や労働時間などのデータを得てまとめている。1月に新たな作成手法を採用し、調査対象の半数弱を入れ替えるなどした。 その結果、今年に入っての「現金給与総額」の前年比増加率は1月1・2%▽2月1・0%▽3月2・0%▽4月0・6%▽5月2・1%▽6月3・3%-を記録。いずれも2017年平均の0・4%を大きく上回り、3月は04年11月以来の2%台、6月は1997年1月以来21年5カ月ぶりの高い伸び率となった。安倍政権の狙い通りに賃金上昇率が高まった形だ。 しかし、調査対象の入れ替えとならなかった半数強の事業所だけで集計した「参考値」の前年比増加率は、1月0・3%▽2月0・9%▽3月1・2%▽4月0・4%▽5月0・3%▽6月1・3%-と公式統計を大きく下回る月が目立つ。手法見直しで、計算の方法を変更したことも誤差が生じる要因とみられる。 誤差に対しては、経済分析で統計を扱うエコノミストからも疑義が相次いでいる。大和総研の小林俊介氏は「統計ほど賃金は増えていないと考えられ、統計の信頼性を疑わざるを得ない。報道や世論もミスリードしかねない」と指摘。手法見直し前は誤差が補正調整されていたことに触れ「大きな誤差がある以上、今回も補正調整すべきだ」と訴える。 厚労省によると、作成手法の見直しは調査の精度向上などを目的に実施した。調査対象の入れ替えは無作為に抽出している。見直しの影響で増加率が0・8ポイント程度上振れしたと分析するが、参考値を公表していることなどを理由に「補正や手法見直しは考えていない」(担当者)としている。 2018年09月12日付 西日本新聞朝刊の記事 |
第二の問題 毎月勤労統計の不適切調査問題で 過去16年間の所得は低め「↓」に算出
今回の新たに見つかった問題です。
不適切な調査により、今度は、長年、給与が低めに算出されていたというものです。その結果、雇用保険の失業給付や労災保険などが過少支給されてきました。過少支給の対象者は延べ1973万人で、総額は537億5千円にもなると言われています。全対象者に不足分を追加支給することが決まりました。
消えた年金問題もそうでしたが、公務員が組織的に問題行動を続けた結果、国民に膨大なツケが回ってくる問題がまたまた起こってしまいました。
勤労統計不正、23年前から ずさん対応浮き彫り賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計」の調査が不適切だった問題で、不適切調査は平成8年から行われていたことが12日、分かった。さらに、500人以上の規模の事業所を全調査しなければならないものを、厚労省は東京都分に加え、昨年6月、大阪、愛知、神奈川の3府県に「抽出」とする不適切調査を要請していたことも判明。統計に対する厚労省のずさんな対応が浮き彫りになっている。 厚労省によると、8年から全国約3万3千事業所を調査していたと公表していたが、実際には約3万事業所しか調べておらず、1割が抜け落ちていた。ただ、厚労省が確認できた範囲では、公表していた数値に影響はないという。 勤労統計は厚労省が都道府県を通じて行い、従業員500人以上の事業所は全数調査がルール。しかし16年からは、賃金が高い傾向にある大規模事業者が多い東京都内約1400事業所のうち3分の1だけを抽出して調べ、このことが全国の平均賃金額が低く算出されることにつながった。 厚労省は昨年6月、東京を参考に、やはり事業規模が大きい事業所を抱える大阪など3府県の各担当課長あてに、同省政策統括官参事官から、1~2割程度除外した抽出調査を行う旨の連絡をした。今回の問題発覚後に撤回されたが、3府県での抽出調査が実際に行われていれば、統計上の賃金額などが低くなり、今回、発覚した過少支給額が拡大していたとみられる。 厚労省の担当者は「統計分野ではほとんどが抽出するというやり方だった。実務レベルで淡々と行われていて、統計上(賃金額などを)改竄(かいざん)するという意図はなかった」と説明。不適切調査が始まった動機や背景については今後、職員への聞き取りを進めて解明していくという。 不適切調査により、雇用保険の失業給付や労災保険などの過少支給の対象者は延べ約1973万人で、追加給付の総額は約537.5億円に上る。雇用保険の中には、育児や介護を理由に休業した人にも支給額が少なかったケースもある。厚労省は相談窓口を設け、追加給付のための申し出を呼びかけている。 2019年1月12日の産経新聞の記事 |
これを政争の具(愚)にしてはいけない!未来志向に!
この二つの問題をめぐって、国会では、現政権の責任を追及する与野党対決が展開されそうです。ただ、今現在、野党側にいる政党や議員の皆さんが、かつて与党だった時代も含め、16年もの長きにわたる問題なのです。この問題を現政権追及のためだけの政争の具にすることは賢明ではありません。
むしろ、一部の省庁や官僚が、自らの(誤った)判断や何らかの意図をもって、こうした各統計操作を繰り返しているとすれば、それこそが、ゆゆしき問題なのです。
それを根拠に舵を取ってきたこれまで十数年にも及ぶ国策自体に、歪みや過ちがなかったかとする『総点検』こそが必要なのかもしれません。予定されている消費税10%へのアップや、外国人労働力をめぐっての政策、抜け出せないデフレ、緊縮財政を理由に停滞し続けている防災対策やインフラ整備などなど、『心豊かに暮らせる日本』を子や孫に受け継いでいくため、賢く、正しい国のあり方を論議していって欲しいものです。
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