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世界遺産 三重津海軍所跡 ガイドブック

世界遺産三重津海軍所跡

目次 Contents

まずは世界遺産のお話

世界遺産とは、地球の生成と人類の歴史によって創出され、過去から現在へと引き継がれてきた貴重で価値のある遺産のことです。1972年のUNESCO(ユネスコ)総会で採択された「世界遺産条約」(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)に基づき誕生しました。

世界遺産の種類

世界遺産の登録基準

  1. 資産が世界遺産の評価基準に合致していること
  2. 資産が「真実性」及び「完全性」の条件を満たすこと
  3. 資産の保護を確実とする適切な保護管理体制が整えられれていること

明治日本の産業革命遺産

製鉄・製鋼、造船、石炭産業


2015年7月に開催された第39回世界遺産員会で、UNESCO(ユネスコ)の世界遺産リストに登録された文化遺産。19世紀後半から20世紀の初頭にかけ、西洋技術に日本の伝統文化を融合させた急速な産業化を遂げた道程を、時間軸に沿って示す産業遺産群です。
日本の工業立国の土台をつくり、のちに日本の基幹産業となる製鉄・製鋼、造船、石炭産業といった重工業部門で構成されています。

明治日本の産業革命遺産

シリアル・プロパティ(関連性のある遺産群)

    1. 萩エリア


      近代化初期の産業遺産群

      1. 萩反射炉

        所在地:山口県萩市椿東4897-7

      2. 恵美須ケ鼻造船所跡

        所在地:山口県萩市椿東5159-14

      3. 大板山たたら製鉄遺跡

        所在地:山口県萩市大字紫福(しぶき)

      4. 萩城下町

        萩城跡の所在地:山口県萩市大字堀内1

      5. 松下村塾

        所在地:山口県萩市椿東1537(松陰神社敷地内)

    2. 鹿児島エリア


      先駆者たちの工場群

      1. 旧集成館

        写真は尚古集成館(しょうこしゅうせいかん)所在地:鹿児島県鹿児島市吉野町9698-1

      2. 寺山炭窯跡

        所在地:鹿児島県鹿児島市吉野町10710-68

      3. 関吉の疎水溝

        所在地:鹿児島県鹿児島市下田町1263先(取水口所在地)

    3. 韮山エリア


      幕末の最先端工場

      1. 韮山反射炉

        所在地:静岡県伊豆の国市中字鳴滝入268

    4. 釜石エリア


      日本近代製鉄発祥の地

      1. 橋野鉄鋼山

        所在地:岩手県釜石市橋野町2-15

    5. 佐賀エリア(ここが三重津海軍所跡です)


      日本の近代造船の礎

      1. 三重津海軍所跡

        佐野常民記念館所在地:佐賀市川副町大字早津江津446-1

    6. 長崎エリア


      近代化を支えた技術の発信地

      1. 小菅修船場跡

        所在地:長崎県長崎市小菅町5

      2. 三菱長崎造船所 第三船渠

        長崎造船所史料館所在地:長崎県長崎市飽の浦町1-1

      3. 三菱長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン

        長崎造船所史料館所在地:長崎県長崎市飽の浦町1-1

         

      4. 三菱長崎造船所 旧木型場

        長崎造船所史料館所在地:長崎県長崎市飽の浦町1-1

      5. 三菱長崎造船所 占勝閣

        長崎造船所史料館所在地:長崎県長崎市飽の浦町1-1

      6. 高島炭鉱

        所在地:長崎県長崎市高島

      7. 端島炭鉱

        所在地:長崎県長崎市端島

      8. 旧グラバー住宅

        所在地:長崎県長崎市南山手町8-1

    7. 三池エリア


      明治~昭和の日本を支えた石炭産業

      1. 三池炭鉱宮原坑

      2. 三池炭鉱万田坑

      3. 三池炭鉱専用鉄道敷跡

      4. 三池港

      5. 三角西港

    8. 八幡エリア


      日本初の鉄鋼一貫製鉄所

      1. 八幡製鐵所旧本事務所

      2. 八幡製鐵所修繕工場

      3. 八幡製鐵所旧鍛冶工場

      4. 遠賀川水源地ポンプ室


三重津海軍所のあらまし

いよいよ、三重津海軍所跡の話をすすめましょう。

江戸時代、佐賀藩は藩所有の和船を管理する船屋を領内に6ヶ所設けていました。そのうちの1つが三重津にありました。安政2(1855)年、佐賀藩は幕府が開設した長崎海軍伝習所へ多くの藩士を派遣して航海や造船の知識・技術を学ばせました。

その一方で、長崎海軍伝習所で学んだことを藩内に広めるため、安政5(1858)年に御船屋があった三重津に御船手稽古所(おふなてけいこしょ)を設けました。これが三重津海軍所の始まりです。

三重津海軍所の場所

三重津海軍所は、現在の佐賀市諸富町・川副町を流れる早津江川沿いの一帯にありました。
このあたりは、幕末当時は「三重」という地域区分であり、その港であるというところから三重の津(津は港の意味)、すなわち三重津と呼ばれ、その規模は今の早津江川の西側の河川敷約600mにわたって広がっていました。

三重津海軍所の目的

外国勢力に対抗するために作られた三重津海軍所

佐賀藩は江戸時代において幕府の命で福岡藩と交代で長崎の警備を行っていました。

文化5(1808)年、佐賀藩が警備当番の時に『フェートン号事件』が起きます。
イギリス船の「フェートン号」がオランダ船を装い長崎港に侵入し、オランダ商館員を人質に薪や食料を求めました。当時外国船に対抗する兵力のなかった長崎奉行所や佐賀藩は、その脅迫に屈してしまう結果となります。責任を問われた幕府の担当官(長崎奉行)だった松平康英(まつだいらやすひで)は切腹、佐賀藩藩主である鍋島斉直(なべしまなりなお)は謹慎処分となりました。この事件をきっかけに佐賀藩は欧米諸国の脅威を意識するようになりました。

天保11(1840)年、清国(現在の中国)とイギリスとの間でアヘン戦争が起こり、イギリスは圧倒的な軍事力で勝利しました。当時大国と考えられていた清国の敗北により、欧米列強のアジアへの侵出に強い危機感を抱いた佐賀藩は外国勢力に対抗しうる力をつけるため、洋式海軍の創立や洋式艦船の整備を進めていくことになるのです。

教育、訓練、造船の場として機能した三重津海軍所

安政6(1859)年に長崎海軍伝習所が閉鎖されると、佐賀藩は独自の海軍の訓練を行うようになり、これに伴って「御船手稽古所」の機能、範囲が拡張され、海軍施設としての体裁が整えられていきます。文久元(1861)年までには、洋式船の修理に使用する部品をつくる「製作場」や修理などのために船を引き入れる「御修覆場(おんしゅうふくば)」などが整備され、三重津海軍所は、幕末の佐賀藩の洋式船による海軍教育、船の操縦や射撃等の訓練、船の修理や船をつくる施設として機能しました。
日本初の実用蒸気船となる「凌風丸(りょうふうまる)」は慶応元(1865)年にここでつくられました。

三重津海軍所敷地内の様子

三重津海軍所は、船を修理したり造ったり、操縦するための教育や訓練を行っていた場所です。広大な敷地内に「船屋地区」、「稽古場地区」、「修覆場地区」の3つの地区がありました。

      1. 船屋地区
        海軍所の前身である「御船手稽古所」がここに置かれてました。海軍所として整備される前は、佐賀藩所有する和船(わせん)を管理する場所で、今でも当時の地形が残っています。
      2. 稽古場地区
        長崎海軍伝習所で学んだ伝習生たちが教官となって、藩士らに航海術や測量術、造船術などの教育を行った場所です。多いときは300人を超える藩士が訓練していました。
      3. 修覆場地区
        船の修理に必要な部品の補修や製造(ボイラーの組み立てや金属の加工など)を行う製作場や修船の際に船を引き入れるためのドライドックが造られました。国内初の実用蒸気船「凌風丸(りょうふうまる)」はこの地区で建造されました。

国内最古のドライドック

三重津海軍所跡は、日本が西洋の船舶技術の導入を行い、自力による近代化を目指した過程を知るうえでの貴重な遺跡として評価されています。西洋のドックは主に石やレンガを材料につくられますが、三重津海軍所のドックは「木」や「土」、和船に使う「船釘」などを用いる、日本の伝統技術を駆使してつくられました。三重津海軍所のドックは、洋式船の修理用ドックとしては現存する国内最古のものです。

佐賀藩が三重津海軍所にドライドックを建造した理由

当時佐賀藩が所有していた和船は全長20m程度でしたが、幕末にオランダから輸入した蒸気軍艦「電流丸」は全長45mもありました。その大きさは、とても船屋地区では管理や修理ができるものではありませんでした。そこで、南端におかれた「修覆場地区」に、このような大型の洋式船を修理するためのドックをつくったのです。

ところで、「ドライドック」って何?

ドック(船渠)とは、船をつくったり修理したりする施設のことです。
通常、ドック内の水は大型のポンプで汲み出して排水されますが、当時はそのような機械がなかったため、三重津海軍所のドックは、日本一とも言われる有明海の潮の干満差を利用して、満潮時に船をドック内に入れ、潮が引くことで自然に排水されるという仕組みになっていました。

三重津海軍所跡の価値

      1. 幕末における洋式海軍成立の様子が分かる
      2. 西洋技術と在来技術との融合体である
      3. 有明海の自然の力を活かした知恵と工夫が残されている

他藩に先がけいち早く西洋の技術を取り入れ、藩独自に洋式海軍を創設した佐賀藩は、洋式艦船の整備や運用を実現しました。藩が蓄積した技術と育成した人材は、明治日本の近代造船の礎を築いています。

幕末から明治維新にかけての激動期。欧米列強の脅威に立ち向かうべく取り組んだ佐賀藩の積極的な近代科学技術の導入は、国内初の反射炉建造の成功により鉄製大砲の鋳造に実を結びました。また、西洋の海軍技術を学び、「三重津海軍所」を拠点に、洋式海軍の創設や洋式艦船の整備を行います。

日本の伝統技術と西洋技術を巧みに融合させ、試行錯誤の末に作り上げた実用蒸気船「凌風丸」は、当時の最先端造船技術の結晶と言えます。

有明海に注ぐ早津江川の下流に位置する三重津海軍所跡。ここに今も、先人たちの知恵と工夫で作り上げられたドライドックの遺構が地中に眠ります。

世界遺産登録までの歩み

  1. 2009年

    1. 平成21年1月5日 「九州・山口の近代化産業遺産群」がユネスコの世界遺産暫定一覧表に記載されました。
  2. 2013年

    1. 平成25年4月23日 ユネスコに推薦してもらうための推薦書を国に提出しました。
    2. 平成25年8月27日 「稼働資産を含む産業遺産に関する有識者会議」(事務局:内閣官房)で資産の名称を「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」とすることが決定されました。
    3. 平成25年9月20日 「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」が世界遺産への政府推薦案件として決定されました。
  3. 2014年

    1. 平成26年1月29日 政府からユネスコへ「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の推薦書(正式版)が提出されました。
    2. 平成26年9月26日~10月5日 イコモス(国際記念物遺跡会議)による現地調査が行われました。
  4. 2015年

    1. 平成27年5月4日 イコモス(国際記念物遺跡会議)により世界遺産一覧表への記載が勧告されました。
    2. 平成27年7月5日 世界遺産委員会において資産の名称を「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として世界遺産一覧表への記載(登録)が決定されました。

佐野記念公園について

三重津海軍所跡一帯は、佐野常民記念館と歴史公園からなる佐野記念公園として整備されています。VR世界遺産キャンペーンムービー

見えない遺産!?地中に眠る三重津海軍所跡

三重津海軍所跡のドックの護岸遺構は木材でつくられているため、地上で空気にさらされていると乾燥で風化してしまいます。風化を防ぎ保護するために、遺構は地中に埋め戻されており、実物を見ることができません。
そのため、佐野常民記念館では、当時の三重津海軍所の様子をイメージできるよう、CG映像をVR(バーチャルリアリティ)機器等で体験する「三重津タイムクルーズ」が行われています。また、同館3階の三重津海軍所跡インフォメーションコーナーでは、パネルや映像、復元模型などで詳しく知ることができます。

みえつSCOPE

三重津海軍所跡の見学は、地図を持ち、イヤホンをつけ、首にみえつSCOPEをかけて出発します。音声ガイダンスを聞きながら見て回れるので、お一人でも十分楽しめます。見どころポイントに来たら、みえつSCOPEを装着してみましょう。約160年前の三重津海軍所をイメージしたパノラマ画像を見ることが出来ます。

みえつSCOPEのご利用

ドームシアター

見上げるドームシアターで迫力のタイムトラベル!記念館1階では、直径6mのドーム型シアターに映し出される迫力満点の映像が視聴できます。三重津海軍所創設に至る佐賀藩のストーリーを約5分間の映像で紹介するものです。

ドライドックの中に立った視点で、見上げるほど大きな洋式船を修復する様子や、有明海の干満の差を利用して運用したドックの映像は圧巻です。

オキュラスリフト

オキュラスリフトは、ドームシアター前で体験できます。360度見渡せる広大な空間の中で、約160年前の三重津海軍所の賑わいがイメージできます。

遺跡から出土!三重津海軍コレクション

ラウンドビジョン

ここから三重津海軍所を知る・楽しむ旅が始まります。この地に刻まれた歴史の1ページを、迫力の大型ビジョンで体感できます。

インフォメーションコーナー

三重津海軍所跡の歴史・価値、ドライドックの仕組み・運用などが、映像・模型・パネル分かり易く解説されています。

三重津海軍所跡 マスコットキャラクター「み・え・つ・まる」

『みえつ』から2文字ずつとって、「みえ(視え)まる」・「えつ(悦)まる」・「つみ(積み)まる」の3匹です。3匹合わせて「みえつまる」!

三重津海軍所跡までのアクセス

ぐるっと世界遺産観光バス

世界文化遺産登録の「三重津海軍所跡」、ラムサール条約湿地登録の「東よか干潟」、重要文化財「筑後川昇開橋」など佐賀市の観光スポットを巡る「ぐるっと世界遺産観光バス」の今年度の運行を平成29年4月29日(土)から開始。

午前と午後に1便ずつ運行し、各バス停での観光時間を設けています。

1日乗車券には5ヶ所の観光施設や飲食店で利用できるクーポンもついていますので、観光・お買い物などお得にお楽しみいただけます。

ぐるっと世界遺産観光バス」を利用して、佐賀市の観光を満喫してみませんか?

運行日

平成29年4月29日(土)から平成30年3月31日(土)までの土日・祝日のみ運行

※年末年始(平成29年12月30日~平成30年1月1日)は運休です。

運行ルート

佐賀駅バスセンター(3番のりば)⇒

佐賀バルーンミュージアム(県庁前)【乗車のみ】⇒

東よか干潟(観光時間50分)⇒

三重津海軍所跡(観光時間60分)⇒

昇開橋(橋の駅ドロンパ)(観光時間25分)⇒

佐賀バルーンミュージアム(県庁前)【降車のみ】⇒

佐賀駅バスセンター

料金

お得な1日乗車券は佐賀駅バスセンターもしくはぐるっと世界遺産観光バス車内で購入できます。
1日乗車券:大人 500円、小児 250円
ご希望の区間のみの区間のみの乗車もできます。ご利用区間ごとに運賃をお支払いください。
運賃:大人 150円、小児 80円
ぐるっと世界遺産観光バスのみに適用する運賃です。
その他詳しい運行情報については、佐賀市交通局のHPをご覧ください。

佐賀駅バスセンター からお越しの場合

佐賀空港 からお越しの場合

福岡 からお越しの場合

自動車 でお越しの場合


参考文献

 

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